外壁塗装の足場代は節約できる?「無料」は危険かも
壁塗装の見積もりを見ると、足場代だけで「15万〜30万円」と記載されていることが通常です。
したがって、「工事が終われば解体して無くなるものだから、少しでも節約したい」、「足場代無料を謳う業者に頼めばお得なのでは?」と考える方も少なくないでしょう。
しかし、外壁塗装において足場代を不当に削ることは、工事全体の品質低下や思わぬご近所トラブルを招く非常に危険な行為です。
本記事では、「足場代無料の裏に潜むリスク」を解説し、高額な足場代を無駄にしないための賢い活用法や、特殊な立地での注意点、そして優良業者を見極めるための「見積書の正しい見方」を紹介いたします。
「足場代無料」という営業トークに隠されたリスク
訪問販売や一部の業者から「キャンペーン中につき足場代を無料にします」と提案されることがあります。
一見すると数十万円も得をするように感じますが、建設業界において足場代が「完全無料」になることは絶対にあり得ません。
その理由と裏に隠されたリスクを解説します。
足場には必ず人件費や運搬費がかかるため(タダはあり得ない)
足場の組み立てと解体には、「足場とび」と呼ばれる国家資格や専門講習を受けた専門の職人が必要です。
さらに、重い鉄製の部材を保管場所から現場までトラックで運搬するための車両費や燃料費も発生します。
労働安全衛生規則でも高さ2メートル以上の高所作業では足場の設置が義務付けられており、これらの「人件費」「部材の損料(レンタル代)」「運搬費」を業者が完全に自己負担して利益を出すことは不可能です。
他の項目(塗料代や諸経費)に費用が上乗せされているケースが多い
では、なぜ「無料」と提示できるのでしょうか。
その理由の多くとしてあげられるのは、本来の足場代(15万〜30万円)を、他の見積もり項目にこっそり上乗せしている点です。
例えば、通常なら単価3,000円/㎡の塗料を4,500円/㎡として計算したり、「現場管理費」や「諸経費」といった曖昧な項目を相場以上に高く設定したりします。
結果として、総額で見れば適正価格、あるいはそれ以上の金額を支払わされているケースが少なくありません。
極端な値引きは「手抜き工事」や「工期短縮」を招く危険がある
もし本当に足場代を業者が負担して総額を安くしている場合、業者はどこかで利益を回収しなければなりません。
そのしわ寄せは「工事の品質」に直結します。
すなわち、塗料を規定以上に薄めて使ったり、通常3回塗るべき工程を2回で終わらせたりする「手抜き工事」が行われる危険性が高まります。
また、人件費を削るために無理なスケジュールで工期を短縮され、細部の補修や養生が雑になるなど、家を長持ちさせるための外壁塗装が本末転倒な結果に終わってしまいます。
無理な足場代カットが招く3つの致命的なトラブル
足場は単なる「作業用の足場」ではありません。
職人の命を守り、近隣住民への被害を防ぐ重要な役割を担っています。
足場費用を無理に削ることで起こり得る、3つの致命的なトラブルを解説します。
近隣への塗料飛散(メッシュシート不備)による損害賠償
足場の外側には、塗料や洗浄水が周囲に飛び散るのを防ぐための「飛散防止用メッシュシート」を張るのが鉄則です。
足場代をケチる業者は、このシートの設置を省略したり、隙間だらけの張り方をしたりすることがあります。
その結果、高圧洗浄の汚水やペンキが隣家の外壁や駐車してある車に飛散すれば、重大な近隣トラブルに発展します。
施主自身が損害賠償責任を問われることも考えられます。
職人の不安定な足元による「塗りムラ」や「塗り残し」
品質の高い塗装を行うには、職人が適切な体勢で均一に力を加える必要があります。
安価で不安定な足場(丸太足場や単管のみの足場など)や、十分な作業スペースが確保されていない足場では、職人が安全確保に気を取られ、塗装に集中できません。
結果として、ローラーの圧力が均一にならず「塗りムラ」が発生したり、手が届きにくい軒下や付帯部に「塗り残し」が生じたりと、数年後の早期剥がれの原因となります。
安全対策を怠った事故による工事中断や工期の大幅な遅延
最も恐ろしいのは、転落事故の発生です。
足場の部材を減らしたり、手すりを省いたりするような不適切な施工は、重大な労働災害に直結します。
もしご自身の家の工事現場で事故が起きれば、労働基準監督署や警察の調査が入り、工事は長期間ストップします。
精神的なショックはもちろんのこと、足場が組まれたまま何ヶ月も放置されるなど、工期の大幅な遅延は避けられません。
足場の「15〜30万円」を最大限に活かす追加工事
足場代は節約すべきものではないことを理解できたら、次に考えるべきことは「高い足場代の費用対効果をいかに高めるか」です。
一度足場を組んだのであれば、高所作業が必要な他のメンテナンスも同時に行ってしまうのが、生涯のメンテナンスコストを劇的に下げるコツと言えるでしょう。
屋根塗装・補修(セットで行うのが業界の常識)
外壁塗装と屋根塗装は、セットで行うのが業界の常識です。
外壁の寿命が10〜15年であるのと同様に、屋根も同程度のサイクルでメンテナンス時期を迎えます。
別々のタイミングで工事を依頼すると、その都度20万円前後の足場代が発生します。
セットで施工すれば足場代は1回分(+屋根用足場代の少額追加)で済むため、長期的な視点で見れば数十万円の節約になります。
雨樋の交換・洗浄(足場がないと将来的に高額な追加費用に)
雨樋(あまどい)は、紫外線や雪の重みで歪んだり割れたりしやすい部分です。
また、落ち葉が詰まると雨水が溢れ、外壁を直接傷める原因になります。
雨樋の交換や清掃も、高所作業であるため足場が必須です。
外壁塗装の際についでに点検・補修を依頼しておかないと、数年後に雨樋の修理だけで「修理代数万円+足場代20万円」という非常に割高な出費を強いられることになります。
高所のシーリング打ち替え(防水の要となる重要メンテ)
サイディングボードの継ぎ目や、窓サッシの周囲に充填されている「シーリング(コーキング)」は、建物の防水性を保つ要です。
シーリングの寿命は環境にもよりますが約7〜10年と短く、外壁塗装よりも先にひび割れなどの劣化が始まります。
2階部分のシーリング打ち替え作業にも足場が必要です。
塗装を行う前に、古いシーリングを撤去して新しく打ち替える「打ち替え工法」をセットで行うことで、雨漏りリスクを確実に抑え込むことができます。
狭小地や特殊形状で足場代が高くなるケースと対策
建物の立地や形状によっては、一般的な相場よりも足場代が高額になるケースがあります。
見積もりを見て驚かないよう、事前に自分の家が該当しないか確認しておきましょう。
隣家との距離が50cm以下の場合は特殊な組み方が必要
一般的な「くさび緊結式足場(ビケ足場)」を組むには、外壁から隣地境界線までに約50cm〜70cmのスペースが必要です。
都心部などの狭小地でスペースが50cm未満の場合、よりスリムな部材を使う「単管ブラケット足場」や「狭小地専用足場」を採用する必要があります。
これらの足場は組み立てに時間がかかり、職人の手間が増えるため、通常よりも費用が割高になります。
また、隣家の敷地を一部借りて足場を組む場合は、民法の規定に則り、事前の丁寧な挨拶と承諾が不可欠です。
3階建てや急勾配の屋根は「昇降設備」などの追加費用が発生
3階建ての住宅は、2階建てに比べて足場の面積が広くなるだけでなく、高所へ部材を運ぶためのウインチ(巻き上げ機)や、安全な昇降設備(階段)の設置が必要になるため、単価が上がります。
また、屋根の勾配(傾斜)が急な場合(おおむね6寸勾配以上)、屋根の上にも「屋根足場」と呼ばれる滑り止めの足場を組む必要があり、別途費用が加算されます。
道路使用許可が必要な立地では申請費用が別途加算される
敷地内に足場を建てるスペースが全くなく、やむを得ず足場の一部が公道にはみ出してしまう場合や、部材を搬入するトラックを路上に駐車したまま作業しなければならない場合は、管轄の警察署長へ「道路使用許可」の申請を行う必要があります。
この申請には手数料がかかるほか、業者の図面作成や申請手続きの代行費用(数万円程度)、場合によっては交通誘導員の配置費用が別途加算されることを覚えておきましょう。
見積書の「足場費用」を正しく比較するチェックリスト
最後に、複数の業者から取った見積書を比較し、適正な足場費用かどうかを見極めるための実践的なチェックリストをご紹介します。
面積計算が「外壁面積」ではなく「足場面積」で算出されているか
見積書を見る際、足場の数量(㎡)が「外壁の塗装面積」と同じ数字になっていないか確認してください。
足場は外壁から少し離れた位置(外側)に設置するため、「足場面積」は「外壁面積」よりも約1.2倍ほど大きくなるのが正常です。
もし外壁面積と同じ数字で計算されている場合、一見安く見えますが、実情に合っていないため後から追加費用を請求されたり、他の項目で調整されていたりする可能性があります。
飛散防止ネット(メッシュ)の設置費用が明確に含まれているか
足場費用の項目の中に、「飛散防止ネット(メッシュシート)」の設置費用が含まれているかを必ず確認してください。
「足場架払費(組み立てと解体の費用)」とは別に項目が分かれているケースと、一式に含まれているケースがあります。
記載がない場合は、「メッシュシートの費用は含まれていますか?」と業者に確認しましょう。
ここを曖昧にする業者は、近隣配慮に欠けるトラブルメーカーの可能性があります。
一括見積もりで自分の地域の「足場単価」の相場を確認する
足場の単価(1㎡あたりの費用)は、地域の人件費や物価によって多少変動します。
全国的な相場は1㎡あたり800円〜1,200円程度(メッシュシート含む)ですが、自身の地域での適正価格を知るには、相見積もりが最も有効です。
3社程度から見積もりを取り、足場の「単価」と「面積」を見比べてみましょう。
極端に単価が安い業者(無料を謳う業者など)や、不自然に足場面積が大きく計算されている業者は、候補から外すのが賢明です。
また、契約前に「足場解体前に、施主も一緒に足場に登って仕上がりをチェック(高所セルフチェック)させてもらえますか?」と質問してみてください。
自信のある優良業者は快諾しますが、手抜きを企む業者は安全上の理由をつけて頑なに拒否する傾向があります。
まとめ
以下、この記事で解説した重要なポイントです。
- 足場は「安全」と「品質」を買うための外せない必須コストであり、「無料」という甘い言葉には、他項目への費用転嫁や手抜き工事のリスクが潜んでいる。
- 1回20万円前後の足場代を「1回で済ませる」のが最大の節約術。外壁塗装の際は、屋根塗装、雨樋補修、シーリング打ち替えなど、高所作業をセットで行うべき。
- 複数社の見積もりを比較し、不自然な「無料提示」に惑わされないこと。足場面積の算出根拠やメッシュシートの有無をしっかり確認する。
外壁塗装は、10年に1度の大きな投資です。
目の前の数万円を惜しんで足場代を削るのではなく、必要なコストとして正しく支払い、安全かつ高品質な施工を手に入れて、大切な住まいを長持ちさせてください。